ナンバーワンでオンリーワンの強さ
昨日インフルエンザの予防接種を受けてきたのだが、注射が終わった後お医者さんに
「今日のところは飲酒や激しい運動は控えて下さい」
と言われた。なぜ駄目なのか気になって調べてみると、
「飲酒や激しい運動により、動悸や呼吸困難を生じることがある。これらの症状が生じると、予防接種の副反応なのか、飲酒や運動による影響なのか判断が難しくなってしまうから」
という事らしい。
ラスを引いて呼吸困難になる可能性、無いとは言い切れない。昨日は天鳳を打たずに充実した時間を過ごした。
先日、山越貴広さんが竹書房より麻雀戦術本を出版した。
山越さんはアマチュアながら競技でも天鳳でも結果を残している凄い人。いわゆる「鉄強」だ。
先日は皆さんたくさんの励ましありがとうございました(`;ω;´)
— こしちゃ (@yamakoshitenhou) March 3, 2019
日常生活を問題なく過ごせる程度に体調も回復してきました。
あと嬉しい報告ですが、以前から少しずつ打っていた鳳南専門アカが本日十段になりました。
天鳳も競技も1番上を目指してこれからも頑張ります(*`・ω・)ゞ pic.twitter.com/RVekFcLpIN
山越さんが十段になるのとほぼ同時に鳳凰卓デビューした僕は、彼の驚異的な成績を目にするや否や牌譜を並べ、可能な限り打ち方を真似をした。
そのお陰ですぐ九段になれた、と言っても過言では無いだろう。
勿論めちゃくちゃツイていたのもあるが。
そんな人が本を出すとなると買わざるを得ない。キンドル版で読んだ後、早速紙媒体の方もゲットしてきた。
結論から言うと素晴らしい本だった。
麻雀の内容は勿論だが、山越さんの麻雀に対する熱い思いが伝わってきたのが一番良かった。山越さん、麻雀が好きだ。
今回は山越本の内容についてのレビュー等はしない。是非実際に手にとって確かめて欲しい。
当ブログでは天鳳の牌譜から、山越さんの強さの秘訣に迫ろうと思う。
ちなみに本には、
「立直者の挙動で七対子の北単騎待ちを一点読みしゼンツした」
というとんでもないエピソードが載っているw
リア麻に限られた話だがこういう挙動読みも彼の強さの一つなのだろう。
だがそのような技術の習得は普通の人には難しい話なので、僕のような電子石ころオタクでも真似できる所だけ取り上げていこうと思う。
では早速見て行こう。
東3局微差の2着目、トップ目とは7600点差。
シャンテン数を数えるのが馬鹿らしくなるようなゴミ配牌だ。何を切っても和了れそうにないこの手から山越さんは…
ドラの白を切り飛ばした!
決してクリミスでは無い。意図的なドラ切りだ。
以前山越さんが木原pの配信にゲスト出演した時
「ドラ役牌は最悪。門前立直を狙う時には邪魔だし、自分以外の他3人も利用できるから。孤立の時は自分の手がどうであれ、相手に重ねられる前に真っ先に切るようにしている。」
というような事を話していた。
今回は運悪く上家に鳴かれてしまったが、鳴かれてもその後の対応力に自信があるからこそのドラ切り。放銃さえしなければオッケー、というスタイルだ。
この局は狙い通り?8000横移動。
その次局。一応聴牌。
出来面子が全て連続形で、どこにくっついても好形高打点立直が打てそう。とりあえず6m単騎ダマに構えて、すぐ6mツモったらフリテン3面張立直も面白い。
それが「常人の思考」だろう。
山越さんの麻雀に「とりあえずダマ」という言葉は存在しないのだ。
のみ手だけど手替わり待ってる時間が勿体無いし、現時点での和了率だと1p単騎強いから立直!
どうだろう。この2局だけでもただの強い人ではない、ということはお分かり頂けたと思う。
正直上2つの選択はどちらも最善かと問われれば、そんなことは無いと思うw 自分も最初見たときは目玉飛び出たw
だがこの打ち方で結果を残しているのもまた事実。
自分の参加率を上げ、他3人の参加率を下げる。山越ロジックに基づく打牌だ。
「山越立直」という言葉が流行っているように、このような強烈なワンシーンだけが切り取られがちな山越さん。
しかし我々が参考にするべきはもっと別のところにあると思う。
次は上二つとは別の半荘から。
東3局トップ目。親番でタンヤオ仕掛けをしていたら、ラス目から立直が入った所。
山越さんは打3mでオリを選択した。
オリ判断自体は普通なのだが、5向聴からドラ役牌を切り飛ばし、メンタンピンの見える手をリーのみ愚形で曲げていたさっきの人と同一人物だとは思えない。
また、ここで1mプッシュする強者もいるだろう。
・1m自体の放銃率の低さ
・親番
・良形確定で、仕掛けの効く一向聴
等々、押し要素は揃っている。
山越さんがオリを選択した理由は1mと7m2枚押し前提の一向聴である、というのもあるが、何より大きいのは
立直と捲り合うには見合わない手だから、であろう。
これは良い牌譜が見つからなかったので言葉だけでの説明になってしまうのだが、以前山越さんを観戦していた時のこと。
東1局6巡目、手牌はメンタンピンドラ1の一向聴。
そこに親番の対面から立直。
で、上家からチー聴の取れる牌が放たれる。
出て行く牌は多少危険だけど、ゲンマやら何やらに習ってチー聴取りそうだな…と思っていたのだが、山越さんは2000点のチー聴を取らず。
次に危険牌をツモってあっさりとオリに回っていた。
先程と同様、立直と捲り合うには見合わない手だから、である。
山越さんはこのように、中途半端な手では一切リスクを負わない。
門前聴牌は全て勝負手!と言わんばかりに曲げてくるが、後手を踏んだ時の対応はとても丁寧。それでも決してサボっているわけではなく、ノーリスクのルートだけを模索する感じだ。
皆さんは山越さんの麻雀をどう感じるだろうか。
誤解を恐れずに言えば、山越さんの強さは
「極限まで選択肢を減らす」
事に起因しているのではないかと思う。
選択肢が数多くあると人はどうしても悩むし、多くのリソースを割くことになる。2択より3択、3択より4択の方が間違える確率は高くなる。
役牌を先切りする事で副露の選択肢が消えるし、何でも立直する事でその局はそれ以降全ての選択肢が消える。逆に先制を受けた相手は選択肢がドンドン増えて行く。
これはあくまで自分の仮説ではあるが。
そして序盤はひたすら先制聴牌を目指して、
先手取ったら何でも立直!
後手を踏んだらベタオリに徹する。
非常にシンプルで素直な麻雀だ。
先手取ったら何でも立直!、だけ真似していると痛い目見ることもあるが、後手を踏んだらベタオリに徹する、は多くの天鳳プレイヤーが参考にするべき所かなと思う。
山越立直と対応力は1セット、だ。
そんなナンバーワンでオンリーワンの強さを持つ山越さんの書いた戦術本。とても面白い一冊です。